新潮の2005年1月号。
バンコクの作家プラープダー・ユンの短編小説が掲載されています。タイトルは「バーラミー」。意味は「七光り」。タイ語を直訳したタイトルは「父の七光り」。
内容は言ってしまうと面白くないので書きませんが、バンコク2大英字紙「NATION」の主幹を父親に持ち(良くも悪くも)、今のバンコクを生きているプラープダーさんしか書けない話です。
これにはちょっとびっくりしました。
どれくらいビックリしたかというと、マンガ家のウィスット君の作るアニメ・マンガ・イラストが毎回毎回魔法のような新鮮な感動をしらっと届けてくれる瞬間、そして映像作家のウィットさんがコーネリアスのエキシビションですばらしいデコレーションをしたのと(そして事情によって、それをいとも簡単に破棄してしまった!)、それにSOIミュージックのVJで魔法のような時間を作り出していた時、そんな時に圧倒的な才能を感じるのと似ている。読みはじめたら刺激的すぎて止まらなかった(比べるものがバンコクのカルチャーばかりでもうしわけないけど)。
プラープダーさんの映画の仕事「地球で最後のふたり」も面白いと思ったし、Eyescream誌でのコラムも毎号面白い。彼の音楽仕事「buahima」も、デザインワークも、編集仕事も素敵だなーと思っていた。インタヴューでの切れのよい的確な受け答えもすごく魅力的だった(偉そうですみません。。。)。けどこれを読んだら圧倒的。すごく刺激的。僕は今までなんでもっと夢中になってなかったのかと後悔するばかりです。がんばってタイ語で読めよっていう話。
彼はこの才能と周りの状況が自分にしか降って来ないことを良く分かっているし、それをこんな風に書きだしてしまう彼は恐いぐらい。
こんなすごい作品を訳して掲載まで漕ぎ着けた東京外語大の宇戸教授は、あきらかにプラープダーの魅力にやられている。プラープダーの本当の凄さにやられてる日本人のごく一部。そしてこの作品を掲載した新潮の編集者はこの作品を読んでびっくりしたと思う。新潮のこの号は「アジア文学」特集。それでたまたまこの作品に出会ったと思うんだけど、この作品はそんなものとは関係ないと編集者もきっとわかってしまったと思う。(またまた偉そうですみません!!)
この作品は、バンコクに行ったことない人でも、プラープダーという人間を良く知れる&90年代後半からのバンコクの事情をしれる素晴らしいガイドブックでもある。言ってみれば岡崎京子の「東京ガールズブラボー」?違うかな。
まだ、新潮は本屋に並んでいると思うので、この僕の文章を読んだ少しでも多くの人が彼の「バーラミー」を読んでくれたらと思います。
プラープダーがキュレーションを行った現在開催中のエキシビション「Have we met?」
http://www.jpf.go.jp/j/culture_j/news/0410/10-09.html
プラープダー自身が始めたばかりの出版社「タイフーン」
http://typhoonbooks.com
prabda yoon「バーラミー」@新潮
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