月別アーカイブ: 2005年1月

Wit&Jiro&Apichatpong/Bakery10years

先日のWITさんの文章を書いたので、勢いに乗ってWITさんの2004年の一番でかい仕事を書いてみようと思う。
(前置き)2004年の12月10日、バンコクの「ラーチャマンクラ」スタジアムで6万人、7時間に及ぶコンサートがあった。「ロック」でも「歌謡」でもない、そのどっちもが合わさった、いやちょっと「芸能」臭強めの「歌謡ショー」のようなイベント。
「ベーカリーミュージック(bakerymusic)」というタイの「メジャー・インディー」とでも言えそうなレコード会社の10周年記念イベント。日本に向けて「ベーカリー」を説明するなら、「フリッパーズをカヴァーしたjoey boyがいた」とか「ピチカートをカヴァーしたMR.Zがいる」とか、「本田ユカさん、ショーンレノン、ZAKさん、大野さんがアルバム参加した(我らが)Moderndogがいる」レーベル(てかレコード会社か)と言える。けどこう書くと誤解がある。彼らはベーカリーの一部にすぎず、そのほか70%ぐらいは、めちゃんこ「芸能」風味が強い「バラード」だったり「ロック」だったりするのだ。ここに「ベーカリー」がタイのヤンエグのハートをガッチリゲットして、メガビッグな会社に成長し、挙句のはてに10周年で6万人のコンサートをやれちゃったりした秘密がある(かなー)、その理由の細かい説明は来週。
(本題)で、そんなビッグなスタジアムロックなコンサートのステージ+映像+照明のトータルディレクションをしたのが、ウィット・ピムカンチャナポン(Wit Pimkanchanapong)さん。そしてWITがパートナーとして選んだのが照明担当に建築家の遠藤治朗。映像担当に映画監督のアピチャートポン・ウィラセータクン。
映像用のプロジェクター47台にスクリーン47台。照明は「照明会社にどれくらい照明機材あるの?よし、それ全部」。というめちゃんこバブリー仕様。集客6万人、ランニングタイム7時間、携帯会社のでかいスポンサー。客席にはプリンセス。終了夜中の2時なのにバカスカ花火を打ち上げたー。などなどやっぱりバブリーでどこか狂ってるはちゃめちゃなイベント。バブルで悪いか、悪くない。こんなにばかげているイベントは滅多ない。
で、これがその写真。
(重要)
http://homepage.mac.com/witpim/iblog/B1029668979/C179532943/E564751833/index.html
http://homepage.mac.com/witpim/iblog/B1029668979/C179532943/E1288435729/index.html
(説明)遠藤はNEW-GUESTHOUSEという建築事務所をやっている。そしてSOIMUSICの主催者。元インテンショナリーズ。最近の仕事はFRAPBOISのショーとかやった。状況に柔軟で、かつひたすら笑える南国フレイヴァー全開の楽しい歌って踊れる建築家。踊れるというのはコンサート照明やってるくせに、FUTONのライブが始まると何故かいつもステージの上で踊っているからだ。
アピチャートポンは「Tropical malady」や「Blisfully yours」が有名なカンヌ受賞作家。ゲイゲイいわれてるし、抽象的すぎとかいわれてるけど、「タイ」の空気を一番よく描けるの映画監督。「抽象経由リアル行き、ああ切ない」。「Tropical malady」は思い出すたび切なくなります。
(もう、遠藤さんがいる時点で、手前味噌な感じバリバリだけど、でも面白いんだからしょーがないので続けます)
WITさんが描いたステージ、照明、映像のイメージ。それをデコレーションしたのがアピチャートポンと遠藤だ。アピチャートポンはこのバカでかい、5つのスクリーン(9スクリーンを1スクリーンに見立てている)のために5つのカメラで「くらげ」「ビーチ」「子供」など、かっちょ良い映像をとってきた。遠藤はその映像を殺さないでめちゃんこハイパーなライティングをデザインした。遠藤の照明はすごい。普通じゃない。照明卓の前に座る遠藤はミュージシャンみたいだ。もしくはゲーマー。隣に座る照明オペレーターが泣きそう、もしくは怒りそうなぐらい、卓を叩く。事前のプログラミングは最小限にして隙間をつくり、あとはライブ。ライブで叩く、卓を叩く。プログラミングとライブ操作の間で照明にはバグが起きる。起きた違和感がめちゃんこ面白い。卓を叩く遠藤の後姿はちょっと感動的だ、大げさではなく。
タイの人はこのショー全体をめちゃめちゃ楽しんでいた。6万人がみんな歌ってるんだもん。すげー。タイの人の気質って現場向きなのだ。会場の雰囲気は花火大会みたい。座席はブロック指定だったんだけど、そんなの守ってるスタッフ・お客ははじめの1時間ぐらいであとは勝手に椅子ならべたり、地べたに座ったりで夕涼みにきたみたいな家族連れとかいて、「やっぱタイはいいなー」。
ぼくが個人的に面白かったのはやっぱりMODERNDOGだった。5曲ほどしか演奏しなかったけど、やっぱりいいんだなー。3人のメンバーの熱量のバランスがいい。
MODERNDOGのショーでは、日本からZAKさんが音響卓をいじってくれた。ZAKさんはただ遊びに来ていただけなのに、そしてMODERNDOGのPODさんもずうずうしく頼んだりはできなかったんだけど、周りのお節介によって、ZAKさんが卓をいじることになった。結果MODERNDOGの音響が一番よかった気がする。
それと「ベーカリー」のアイドル部門「DOJO CITY」レーベルのショーもよかった。タイの「ハロプロ」というかなんていうか、ちょっと変態っぽい感じ。残念だったのは「ドラッグ4000錠保持(!)」で一番重要なTriumph Kingdomの女の子が不参加だったことだ。ドラッグ4000錠も持ってたら一生牢屋にいることになるんだろう。みんな大好きTKだったのでこの出来事には落胆した人も多かったと思う。
だんだんベーカリーの説明っぽくなってきたので、この辺で終わり。僕はこのコンサート、「音楽」よりも「ステージ」の方が楽しくて楽しくてしかたなかった。

“Have We Met?―見知らぬ君へ”

国際交流基金が主催の“Have We Met?―見知らぬ君へ”へ行ってきましたー。日本のキュレイターは資生堂ギャラリーの河野晴子さん、プログラム・ディレクターは基金の古市保子さん。
大雑把に言うと、「80年代の経済発展、90年代のデジタルテクノロジーの発展を経て出てきた日本と東南アジア・南アジアの新感覚派の若手を取り上げる」という趣旨のこの展示(詳細はこちら参照のこと)。
みんなゆるーい作品。僕は日本のさわひらきさんの作品がすごく好きでした。(ま、そんなことはどーでもいー)
で、タイからは、プラープダー・ユン(Prabda Yoon)がキュレイションを担当し、ウィット・ピムカンチャナポン(Wit Pimkanchanapong)とポーンタウィーサック・リムサクン(Porntaweesak Rimsakul) が参加。
ポーンタウィーサックさんは大阪graf「8月のタイ」同じ作品を出品。(grafの方によれば「8月のタイ」のタイプの足が改良されてる!とのこと)お尻についてるスイッチ押すとヤカンがヒョコヒョコ歩く。神社の鳩みたいにワラワラ蠢いていて可愛い。
そして、ウィット・ピムさん。彼は『tra(b)el(l)』と『Still Animation』の2作品をエントリーしていたんだけど『Still Animation』、ちょっとこれについていろいろ思うところがあるので書いてみようと思う。
Have we met?
僕はこの展示についての批評を2つ読んだ。『朝日新聞』1月20日夕刊の「美術」の欄と『スタジオ・ヴォイス』vol.350の「ART SV CUT UP」 の欄で、どちらも展示については好意的。そして気になるアーティストいくつかを選んでコメントを書いています。どちらもWITさんのことを取り上げている。勝手に転記。
朝日新聞の方。
1月20日夕刊 文=山盛英司
見知らぬ人に「どこかでお会いしたことはありますか?」と声をかけられたら、普通は怪しむ。でも、その問いを展覧会名にした「Have We Met? –見知らぬ君へ」展の場合は大丈夫。インド、インドネシア、タイ、日本の20代から30代の14作家の作品は、みな親しげで、初々しくすらあるから。
(略)
ひねりを利かせた技巧派もいる。
(略)
ウィット・ピムカンチャナポン(タイ)は、家族を撮影した短い映像を反復させ、静止画像でも動画像でもあるような両義的な映像を作り出す。
(略)
90年代、アジアの現代美術は躍進した。それを見て育った新しい世代の美術家や展示企画者たちが活躍を始めた。今回、4ヶ月から選ばれた4人の企画者たちもそうだ。彼らは、アジアを起点に新しい人間関係を作ろうとしているようだ。展覧会名は、そのための軽やかで慎み深い、出会いのあいさつということだろう。

そして「スタジオ・ボイス」誌の方。
Studio Voice
ART SV CUT UP 文=喜藤笑子
(略)
タイの作家は2人しか選ばれなかったが、ウィット・ピムカンチャナポンによる「スティル・アニメーション」は、ヴィデオ素材をわざわざコマ落としで再編集したアニメーションで家族の日常生活のポートレイトといえる小技の効いた小品だが、そのシンプルさゆえに奇妙なオーラが出てしまうともいえる。
(略)

あの、すごく細かいことでなんなのだけど、これ、ちゃんと調べて書いているのでしょうか・・・?
Still Animation
Still Animation”POR” 意味は「お父さん」
WITさんの「スティル・アニメーション」は上の二つの評価ように不思議な魅力を持っている作品です。SOI MUSICに来た人ならば、VJやってたWITさんの才能わかると思うけれど、彼の色々な作品の中でもこれは際立って変でカッコ良い作品。僕も遠藤さんも小山田さんも皆がこれみて、うーんと唸ってしまった。
でも、これは、「撮影した短い映像を反復させ」てなんていないし、「ヴィデオ素材をわざわざコマ落としで再編集」なんてこともしていない。
これは「静止画」を一枚撮って、それを編集している(ちょこちょこ切ったり張ったりしてるんだ。)。「The feeling of Sitll Animation is ‘still picture try to move but cannot’」、イエス。全くもってこれが正解。でそんな作業の結果が「静止画像」と「動画」の間のような、妙な時間、空間を作り出しているんだ。
「短い時間の動画を編集」というのと、「静止画を編集」っていうのでは、作品を見たときに受ける感触・意味合いが全然かわってくるのじゃないかなー、と思う。僕は美術の批評家でもないし、その意味って何だ、説明しろって言われると、それはうまくできないけど、明らかに面白さが違うのは分かる。だいたいさー、それだったらタイトルは「Still Animation」ではなくて「Still Movie」とかになるんじゃないのかな。
仕事として文章書いてる、美術の批評やっている、この2名はこれくらいのこと、(気づかないにしても)調べることぐらい出来たのではと疑問に思ってしまう。そして、この2人の記事を読んだ人がWITさんの作品を、WITさんの意図と全く別の方向の解釈をしてしまうのが怖い。(別に皆が勝手に色々思うのはいいんだけど、この情報が基になっての解釈されてたら、嫌なんです!)
ただ、これはもしかしたらこの2名の書き手のせいではなくて、他の所に「間違い」の原因があったのかもしれない。例えば、国際交流基金が間違った説明をした、キュレイターが勘違いしていた、WITさんが嘘をついた、犬が棒にあたった、樽ドルが人気だ、etc。
冗談は「ソムタム(青パパイヤのサラダ)」作るバチで粉砕しておくとして、まあ、どこに原因があるのかわからないけれど、もう書いてしまった文章はしょうがない。だからせめて“Have We Met?―見知らぬ君へ”を楽しんだ人、WITさんの作品が気になった人、ちょっとした勘違いの原因を作った人たちがググって、検索して、この文章を読んでくれればと思う。だから名前も色々書いてみた。
最後に、ローカルキュレイターを担当した、プラープダー・ユンがパンフレットに書いた文章。これが一番良く「分かってる」。プラープダーはさんいつもホントによく分かってる。(ていうか、レヴュアーはこんな基本的な資料読んでないのかな。)
以下『“Have We Met?―見知らぬ君へ”展カタログ』プラープダー・ユンによるウィット・ピムについての文章より抜粋。

write= Prapda yoon
「アニメート」という言葉は、動きを作り出すことを意味する。ピムカンチャナポンの《Still Animation》は、実際に動いている私的なイメージ――多くは彼の家族の写真――である。しかしそれらのイメージは、決まった位置で動く。これらは何か別のものになるような動き方をするわけではないので、「静止画像」だとも言えるだろう。「次」という時間への変遷や過程、飛躍はないのだ。「Still Animation」という言葉は、意味を成さない。アニメーションは静止したままでいるわけにはいかない。静止画像も動くわけにはいかない。
(以下略)

ウィットさんは、バンコクのデザインオフィスで、ひょろひょろした体で、ぼさぼさした頭で、あんまり寝ないで、めちゃんこ楽しいアイディア考えてる。日本での折角の晴れ舞台なんだから、ちと頼みますよ(だれがだ?)、愛だろ愛。
以上(はー、ながっ)。
きむら(soi music)
Still Animation
Still Animation、おかーさーん!!!

ウィスット・ポンニミット/ENBAN Visualive!

タイマンガ家のウィスット君。
1月29日(土)に円盤企画のライブイベントに出演します。「円盤ヴィジュアライヴspecial!」。 円盤企画だけど場所は渋谷o-nest。
(関連URL)
円盤
O-NEST
このページ最後にイベント詳細を載せます。
前回円盤の「顔をあらう」も好評に終了したタムっちょ。「顔をあらう」は作る予定のアニメーションのタイトルだったんだけど、間に合わなくって「車」っていうアニメをつくって来たんだ。でもそれって「間に合わなかった」んじゃなくって、「作る気なかった」んじゃないのか!フライヤーまで「顔をあらう」使用にしてたんだよ!やられたよ、タム!「車」はよかったよ!
そんな意見もありましたが、今回は広い場所なので前回お断りしてしまった方々も入れるはず、ウィスットの出番は8時半頃なので、終電にも間に合いますよ。
2月中旬に新刊「everybodyeverything」の出版も控えているウィスット。2月26日にはタイのアリアンスフランセーゼで「everybodyeverything」タイ語版出版記念イベントを行うタム。3月末には大阪graf(東京も?)にも行きます。今年もバシバシやるぞ(え)。
最後に大阪のgrafが年末に出版した「newsGM」(007号)からの引用です。

~~
僕が今のバンコクに想いを馳せる時に、ある有名なアルバムの前書きからの一節を思い出す。
「芸術について僕が思うのは、それはスーパーマーケットで買い物をするようにアレとコレを買ったからカゴの中はこうなるというものではなくて、アレもコレも買ったけど結局は向こうから走ってきた無限大がフッと忍び込んで決定的な魔法をかけて住みついてしまったどうしましょう、というようなものではないかということだ。」
今のバンコク、そこには魔法に取り付かれちゃった人がいっぱいいて、街には無限大がフッと忍び込んでいるような気がする。(僕にとって、魔法度100%なのは、ウィスット君やプラープダーさん、ウィットさんであったりするのだけれど。)
~~

帽子の下の煙
ぜんぜん関係ないけど、タイ語ででてる単行本。kwantaimuwak。
以下イベント詳細です。
「円盤ジャンボリー2 VISUALIVE special!
宇川直宏
ユダヤジャズ
ウィスット・ポンニミット
ドラビデオ(from山口)
ファンタスティック・エクスプロージョン
バブルB
佐伯誠之助(from宝塚)
生西康典+植野隆司+鈴木ヒラク
(音がバンド名)
虫ミュージック+8WORDS+ツポールヌ
BONSAI
大和川レコード(from大阪)
岸野雄一渦巻きオーケストラ
明日は明日のコルベッツ(from名古屋)
TURBO SONIC
開場18:00/開演19:00 ● 前売¥2500/当日¥2800 ●ドリンク別
TICKET ●O-nest・ぴあ・ローソン