先月の末、タイのロックバンド、Moderndogの4枚目のニューアルバムが出ました。タイトルは英語で『That song』タイ語だと『Dad song』、意味は「日の光」とかそんな感じ。タイ語と英語のダブルミーニング。
『That song』
モダンドッグは、POD、MAY-T、PONの3人から成るバンドで、「バンコクのオルタナロックの草分け」、「10年目のベテラン」など色々呼ばれますが、僕が考える魅力は、
*3人のメンバーの個性的でキュートなキャラクター
*ヴォーカルのPODのちょびっと涙を誘う素敵な歌とパワーがあるパフォーマンス
*NY-バンコク-日本-スペインなどを繋ぐ彼らの豊富な関係性の中から生まれるコラボレーション
かなと思っています。
この『That Song』は、静かでシンプルな音楽、というのが聞いた感触ですが、中をあけてみるとすごく面白い人たちが関わっています。
SONG DOCTOR / Yuka Honda
PRODUCER / Tony Doogan(belle&sebastianとかmogwaiとかのプロデューサー)
ADITIONAL MUSICIAN / Sean Lennon、Ohno Yumiko、ZAK
と凄く豪華。(ソングドクターって可笑しい、笑。でも素敵な言葉。本当に本田ユカさんは彼らにとって治療をするように気持ちよく曲作りを導いてあげたらしい。)レコーディングもバンコク以外ではNY、TOKYO(これはZAKさんのスタジオ、ストロボのこと)で行われました。
彼らは外国人と仕事するのは初めてではなくって、映像作品はスペイン人のZORANが、ライブの舞台は日本人の遠藤治朗が作る(この2人のコラボレーションワークのライブDVD『The Very Common Of Moderndogcumentary』は素晴らしい)。
こんな良い状況をMDが手に入れたのは、彼らがNYにいたとき、東京に来たときにつくったコネクションというのも大きいかも知れないけど、もっと大きいのは今のバンコクの状況。MOGWAIのドラマーのmartinは若手のcliquetparたちが行うSO::ONのパーティーに出演していて皆仲良くなったし(結果としてSO::ONがtonyを紹介したようなもの。)、SOIミュージックでCORNELIUSやSPANKSやZAKYUMIKOなんかを受け入れてくれる楽しい土壌が今のバンコクにはあるような気がします。
この『That Song』はMDの2004年をあらわしているかもしれないけれど、なんとなくバンコクの今の良い雰囲気を現しているような気もします。
さて長くなりましたが、この曲のおススメ。
1曲目「Ta sawan」。「ターサワン」は「目に光が射す」と書いて、ある時ふとあの人が大切な人だったんだーと気付いてしまうという意味。力が溢れてくる名曲。3曲目「Dad song」は表題曲。7曲目「gift」はムーグとコーラスでバッファロードーターの大野さんが参加した(タイ語で歌ってる!)ポップな曲。他の曲も素敵ですよ~~。
来年3月には大きなツアーも控えているようなので楽しみ。
DDTマガジン表紙のモダンドッグ御三方。
月別アーカイブ: 2004年12月
ウィスット・ポンニミットonトップランナー
FUTON meets BRUTUS
BRUTUS 2005/1/15号で菊地成孔さんがFUTONとSOI MUSICについて言及しています。
*BOOM BOOK2005「知っておくべき2005年キーワード解説」
「肉食性で野蛮」だけど「飛び切りチャーミングでハッピー」っていうのはFUTONにぴったりな言葉だと思うなあ。
FUTONの1000枚限定プレ・アルバム(?)「FUTON1000」。直球なタイトル!内容は・・・まっとうにカッコいい音楽です。もうバンコック・ゲイ・エレクラなんて言葉いらないなー。MOMOがタイ語で歌う「HIGH」は優しい高揚感がある名曲。
prabda yoon「バーラミー」@新潮
新潮の2005年1月号。
バンコクの作家プラープダー・ユンの短編小説が掲載されています。タイトルは「バーラミー」。意味は「七光り」。タイ語を直訳したタイトルは「父の七光り」。
内容は言ってしまうと面白くないので書きませんが、バンコク2大英字紙「NATION」の主幹を父親に持ち(良くも悪くも)、今のバンコクを生きているプラープダーさんしか書けない話です。
これにはちょっとびっくりしました。
どれくらいビックリしたかというと、マンガ家のウィスット君の作るアニメ・マンガ・イラストが毎回毎回魔法のような新鮮な感動をしらっと届けてくれる瞬間、そして映像作家のウィットさんがコーネリアスのエキシビションですばらしいデコレーションをしたのと(そして事情によって、それをいとも簡単に破棄してしまった!)、それにSOIミュージックのVJで魔法のような時間を作り出していた時、そんな時に圧倒的な才能を感じるのと似ている。読みはじめたら刺激的すぎて止まらなかった(比べるものがバンコクのカルチャーばかりでもうしわけないけど)。
プラープダーさんの映画の仕事「地球で最後のふたり」も面白いと思ったし、Eyescream誌でのコラムも毎号面白い。彼の音楽仕事「buahima」も、デザインワークも、編集仕事も素敵だなーと思っていた。インタヴューでの切れのよい的確な受け答えもすごく魅力的だった(偉そうですみません。。。)。けどこれを読んだら圧倒的。すごく刺激的。僕は今までなんでもっと夢中になってなかったのかと後悔するばかりです。がんばってタイ語で読めよっていう話。
彼はこの才能と周りの状況が自分にしか降って来ないことを良く分かっているし、それをこんな風に書きだしてしまう彼は恐いぐらい。
こんなすごい作品を訳して掲載まで漕ぎ着けた東京外語大の宇戸教授は、あきらかにプラープダーの魅力にやられている。プラープダーの本当の凄さにやられてる日本人のごく一部。そしてこの作品を掲載した新潮の編集者はこの作品を読んでびっくりしたと思う。新潮のこの号は「アジア文学」特集。それでたまたまこの作品に出会ったと思うんだけど、この作品はそんなものとは関係ないと編集者もきっとわかってしまったと思う。(またまた偉そうですみません!!)
この作品は、バンコクに行ったことない人でも、プラープダーという人間を良く知れる&90年代後半からのバンコクの事情をしれる素晴らしいガイドブックでもある。言ってみれば岡崎京子の「東京ガールズブラボー」?違うかな。
まだ、新潮は本屋に並んでいると思うので、この僕の文章を読んだ少しでも多くの人が彼の「バーラミー」を読んでくれたらと思います。
プラープダーがキュレーションを行った現在開催中のエキシビション「Have we met?」
http://www.jpf.go.jp/j/culture_j/news/0410/10-09.html
プラープダー自身が始めたばかりの出版社「タイフーン」
http://typhoonbooks.com