月別アーカイブ: 2006年8月

【SOIMUSIC的バンコクディスクガイド】タイ初のシューゲイザーバンド!?

goose
グース / 20ガンズ・ポインティング・イン・ユア・フェイス (smallroom) (2005)
Goose / 20 Guns Pointing Pointing in your face (smallroom) (2005)
当コラム、いつも「バンコク初」のとか「タイ初の」とか言っている気がしますが、バンコクでは「広く浅く」各ジャンルに1バンドぐらいづつ良いミュージシャンがいるのです。それがバンコクの良いところであり弱いところというか・・・。でも初めはどんな文化もこんなもんかもしれないなーその後にフォロワーが来るもんだ!とも思うとこの人たちはバンコクなりの時代を作ってるとも思えるとかなんとか言い訳したりして・・・。
と、いきなり蛇足から始まりましたが、今回はバンコクポストロック界の期待の星、GOOSEの2ndアルバム。激しいギターの洪水(トリプルギター)と電子音が特徴のアルバム。MOGWAIやGY!BEなどが引き合いに出されているだけあって「重厚」「ハード」なんて言葉が似合いそうな感じにメランコリックでダークな世界観。とても夏が毎日40度越えのバンコク生まれてる音楽とは思えないほどクール。ただあくまで真っ暗になりきらない感じなのは、甘い声のヴォーカルのおかげか。
GOOSEは2004年に「GOOSE」(DRY FLOWER)でデビューした男の子5人組のバンド。1stアルバムはバンコクのインディーズ専門ラジオ局のチャートの上位に食い込み、現地の音楽ファンの話題となった。轟音ギター炸裂のライブには音楽関係者や熱心な若いファンが集まり、バンコクで今一番話題になれる若手バンドといったらGOOSEというのは間違いなし。「タイ初のシューゲイザーバンド」という文句は僕が考えたものではなくタイ人が言っていたもの。
goose members
グースのメンバー。左よりNym(G)、Kong(B)、Tong (V&G)、Ba (Dr)、Art(G)。一番左のギターの太っちょ「ニム」がリーダー的存在。彼のライブのギターが最高。
その後2005年春には、バンコクのエレクトロニカレーベルso::onのコンピ「Gosted Notes」に参加。このso::onは実際にMOGWAIと交流があるレーベル。吉田達也さんやディクソン・ディーを招聘したりと精力的に活動。主宰の清水宏一氏はGOOSEのサウンドのMIXを担当。(*ここの情報を訂正しました。)GOOSE第6のメンバーと言ってもいいぐらいの役割を担っている清水氏はGOOSEに限らず、今のバンコクのサウンド作りのキーパーソン。浅野忠信氏主演の映画「invisible waves」の音響も担当している。
so::on(http://www.myspace.com/ghostednotes)
話は戻ってGOOSEがその後2005年の秋にバンコクインディーズの最大手(なんか変ないいまわしだ)smallroomからリリースしたのが本CD。このGOOSEというバンド、冒頭でも書いた通りかなり硬派な音楽性が売り。話題になっているバンドとは言え、このCDがバンコクっ子に売れるのか?という心配はかなりあった。が、蓋を開けてみれば、なかなかな売り上げを記録したようでsmallroomのスタッフもGOOSEもそして周りの関係者も安心とともにバンコク音楽市場の現状を嬉しく思ったりもしているのだ。
smallroom(http://www.smallroom.co.th/)
さて、この渋く通好みされそうなバンドが何故「バンコク渋谷系」なんて形容されることもあるポップなレーベルカラーが売りのsmallroomからリリースされたのか。それは94年に話はさかのぼる。過去のエントリーでも書いたが、smallroomは当時英国直径の音楽をやって全く売れなかった伝説のインディーバンド「crub」というバンドのメンバーが興した会社。時流にそっぽを向かれた当時の反省もあり、smallroomではポップな音楽で市場との折り合いをつけ、インディーズブームの火付け役として、地道なバンコクっ子の音楽啓蒙活動にいそしんでいたのです(たぶん)。
そして状況が徐々に整いつつある中、smallroomのディレクター氏が(crubのような)次世代のバンドの登場を待っていた時に現れたのが、このGOOSE(たぶん)。ディレクター氏が10年以上の時を経てGOOSEに自らのcrubを重ねているのは間違いない。そんな経緯があり、GOOSEはネオ渋谷系なんて言葉を吹き飛ばすように、GOOSEらしい爆音サウンドの作品をsmallroomよりリリース。そして、それがある程度の数で受け入れられてる状況はsmallroomのディレクター氏にとっては10年越しの夢果たしたり!という感じなのだろう。
smallroomとso::onという毛色が違うバンコクの2つのレーベルから愛されているあたりもGOOSEへの期待のあらわれ。モダンドッグ以降、音楽性と大衆性を上手く両立させたギターバンドがなかなか出てきてない今、GOOSEへの視線は熱い。
GOOSE2
スナップ風アー写。しつこいが左から2番目のGのニムが最高。中央のトン(Vo)がスポーツマン風なのもなかなかよい感じ。
ちなみにすごい個人的な感想ですが、このアルバムが今のバンコクの音楽の中では一番好きなワタクシ。それと音源も良いですが、5人の男子が汗かきながら繰り広げるライブはなかなかに良いです。でぶっちょ、痩せ、スポーツマン風と見た目もなかなかキュート。本当に今も今後も楽しみなバンドです。そんなこんなでGOOSEも10月14日の京都のイベントに出演(笑)。手前味噌ですが、バンコクNOWなGOOSEは、なかなか日本で見る機会はないと思います!ヨロシクです。以上!
POP ASIA 2006 +kyoto
曲順表
1 Disappear Son
2 for Andy
3 ไหม้
4 In my eyes
5 เวลาที่มี
6 ฝุ่นผง
7 click
8 ลั่นทม
9 เปลือก
10 Midnight Piano
11 To Die For
12 no.9
13 เมฆฝน
視聴はこちら(http://www.myspace.com/verygoose)
【告知】
06年10月14日京都メトロでのバンコクミュージシャンのイベント smallroomのミュージシャンも来ます。
HP→POP ASIA 2006 +kyoto
監修したバンコクものコンピ(GOOSE収録)
 

【SOIMUSIC的バンコクディスクガイド】バンコクのサザン!?


モダンドッグ「ウェイク・アップ・アット・テン」(SONY BMG ENTERTAINMENT,THAILAND)(2005)
Moderndog 「Wake up at ten」(SONY BMG ENTERTAINMENT,THAILAND)(2005)
タイロックの先駆けモダンドッグの10周年記念のライブ「Wake up at ten」のライブ録音CD版。3枚組み。(他に同じタイトルで同イベントの映像VCD、DVDもあり)
さて、まずモダンドッグ(以下MD)の紹介をすると、MDは94年バンコクの新興レコード会社「bakery music(ベーカリー・ミュージック)」からデビューしたバンド。いわゆるグランジな音作りでタイにはなかった洋楽を取り入れたスタイル、「君を愛してる~」が横行していたタイ音楽界では斬新というか意味不明とも言われた抽象的で文学的なタイ語歌詞(「君を愛してる~」は今でも横行中)、エキセントリックなライブパフォーマンス、名門チュラ大出身、と色々重なった条件で、デビュー作「moderndog」は60万枚を記録する大ヒット。テレビにもイベントにも引っ張りだこで音楽ファンだけでなく、屋台のおばちゃんや政治家まで幅広い層に知られるところとなった。というわけでMDは歌謡曲主体の音楽シーンに変えるきっかけになったお茶の間レベルのエポックメイキングなバンドなのです。(というのが本記事タイトルの落ちどころ)
タイロックの「パイオニア」としてキャリアをスタートしたMDは、ヴォーカルPOD(ポッド)のカリスマ性というか優れた人間性もあって、バンコク文化界の中心的存在としてその後10年間、音楽だけでなくアートやファッションなど色々な場で活動していくことになる。ちなみに最新のオリジナルアルバム「that song」では、ショーン・レノンやZAK氏、大野由美子氏、本田ユカ氏なども参加している。これもPODの人徳も大きいはず。
で、クリエイティブな音楽シーンを見てみると、10年経った今でもMD以上に存在感を出すバンドはなかなかいない。先駆者にして現役NO.1バンド、そう言っちゃってもいいぐらいバンコクではかなり重要なポジションにいるバンドなのです。
さて、このCDの紹介にすすむと、これは2005年10月に行われた「wake up at ten」というスタジアムコンサートのライブ録音。10周年記念コンサートということで過去の4枚のアルバムの曲をほぼ網羅。結果的に10年の集大成ベスト盤となっている。デビュー曲「busaba(ブッサバー)」の会場全体の盛りあがりなど流石といった感じがあります。
この3時間にも及ぶこのコンサート、MDの年季が入ったパフォーマンスもさることながら、演出も異常といえるほどハイテンション。我々soi musicの演出もやっているというかsoi musicの遠藤治郎氏とWIT(ウィット)とPEE(ピー)3人で手がけたステージは圧巻!説明が長くなりそうなので省きますが、この歴史的瞬間と言ってもいい現場にいなかったことを後悔する今のバンコクでしかあり得ない舞台演出。MDに限らずこういった「現場」がやたら面白いのが、バンコクの音楽の魅力というか、ディスクガイドなんて企画をずっとやらなかった理由なのかなーー。

参考:ちょっと説明がなさすぎるのでコンサートの模様が見れるWEBサイトへのリンク。演出のひとりwitのブログ。ビデオが見れる。

WITBLOG
そんなこんなでこの「Wake up at ten」も、実は音源よりもDVDがオススメ。MDのライブの素晴らしさだけでなく、今現在のバンコクの無規制な現状(笑)やノリが楽しめる一枚となっています。これを見れば、いかにはちゃめちゃなことがバンコクで起きているのかがわかるはず!?
というわけで最後にまだ間に合う今年のバンコクイベント案内。
11月12日13日に開催される「FAT FESTIVAL」というロックフェスはバンコクらしい魅力が集まったはちゃめちゃで可笑しいフェス。昨年の模様をさらっと紹介すると、昨年は市街地の遊園地跡で開催されたが、周りの住人への事前ネゴシエーションが行われていたなかったせいかリハ日に「うるさい」「きいてない」と大モメ(笑)。結局主催者は周囲の住人全てをホテルに移動する(!)なんてはちゃめちゃな措置をとった。当日は当日で、終演時間が警察の都合で3時間ぐらい早まって(!)かつ開始が当然のように遅れるので、「巻かなきゃなのに押していく」という状況。出演者は出演者で「ごめんドラマーが遅刻してるから順番変わってもらっていい?」なんていう具体に現場ですぐ変えるので(笑)、タイムテーブルなんてあってないようなもの。挙句の果てにフェスの最後の最後に、恐ろしいほどのスコールが降って、機材はほとんど壊れたのではないか。そして雨の後の渋滞で帰宅が大混乱、っていうそんな具合でした。ちなみにその前はなぜか競馬場で開催(こちらも大モメ)。毎年もめてるのに全く懲りないロックフェス。まだ間に合いますよ~。
まだオフィシャルHPがないので、myspace内の速報ページをリンク。
(重要)そしてそんなバンコクのミュージシャンが来るイベント10月14日に京都メトロでやるので、こちらにもきてね。(下に詳細リンク)
曲順表
CD 1
1. Tar sawang Feature Thep Pohngarm : ตาสว่าง Featuring เทพ โพธิ์งาม
2. Dad song : แดดส่อง
3. Parn : ผ่าน
4. Hai tur mar : ให้เธอมา
5. Bon fah : บนฟ้า
6. Kun lae kun : กันและกัน
7. Lom hai jai : ลมหายใจ
8. Tur tao nun : เธอเท่านั้น
9. Klai : คลาย
10. Very Good
11. Esarn Classic : อีสาน Classic
12. Roop mai lhor : รูปไม่หล่อ
CD 2
13. Por sia tee : พอเสียที
14. Kor : ขอ
15. Mhod we la : หมดเวลา
16. Luek sueng : ลึกซึ้ง< 17. Korn : ก่อน 18. Bang sing : บางสิ่ง 19. Sing tee mai kuey bok : สิ่งที่ไม่เคยบอก 20. Happiness is 21. Tee jing nai jai : ที่จริงในใจ 22. Chewit : ชีวิต 23. Tur : เธอ 24. Kala : กะลา 25. Manee : มานี CD 3 26. Bussaba : บุษบา 27. Tim : ติ๋ม 28. Nueng kon : หนึ่งคน 29. Kob kun : ขอบคุณ 30. Sar bai jai : สบายใจ 31. We tarn : เวตาล 32. Mar : มา 33. Tah sawang : ตาสว่าง 【おしらせ】 06年10月14日京都メトロでのバンコクミュージシャンのイベント POP ASIA 2006 +kyoto

【SOIMUSIC的バンコクディスクガイド】小さな街で何が起きてるのか?

smallroomWhat Happens in this Smallroom?
コンピ「ワット・ハプンズ・イン・ディス・スモールルーム」(smallroom)(2000)
V.A “What Happens in this Smallroom?”(smallroom)(2000)
2000年の1月に発売され、バンコクだけでなく海外でも話題を巻き起こしたsmallroomレーベルの第一弾コンピレーションアルバム。
ギターポップ、ボサノバ、スウェディッシュポップ風などなど10組のミュージシャンが1曲づつ参加。雑多でバラエティーに富んだ内容に、バンコクって街にこんなバンドがいるんだ!という驚きと共に、世界中の視線がバンコクに集まるきっかけになった。
・・・というのは大げさというかほぼ嘘で、少なくとも日本ではほとんど誰も注目してなかった。僕の認識では、当時の所謂タイポップファンって所謂芸能なタイミュージックにしか興味なかったんだから当然のこと。なんて書くと怒られそうだが、「タイミュージックが好き」っていうのが、「タイが好き」の前提のもと、「タイのビーチが好き」「カオサン安宿的バックパック旅行が好き」「タイ料理が好き」「タイで売春するのが好き」なんていう横に並んでいるもんなのだから仕方がない。(なんて書くと怒られるって・・・。)
で話を戻して、偶然このCDを聞くことになった一部の海外音楽ファンの間で反響があったのは確かで、バンコク在住のドイツ人の小説家などはこのCDに驚き、早速smallroomにコンタクトを取り、後のsmallroomのコンピに収録されたりもしている。話がまたちょっと飛ぶが、この辺の在住外国人がいるような国際的な環境や、さらにアプローチのし易さっていうのがこの現代のバンコクのシーンの特徴のひとつだったりもする。
収録ミュージシャンの「Groovy Airline」や「 Greasy cafe’」的な「オシャレ」なバンド名もさることながら、「Japanese dance music」や「swedish pop」なんて具合に各曲にテーマが書いてあるのにまず驚いた。確信犯的というより、開けっぴろげなその態度はやはりまだいろいろやる余地が残っているバンコクの勢いだったと今では思う。「Japanese dance music」というコピーがついたM2は「これってHCFDM!?」(死語っていうか誰も覚えてない)なんて思いがよぎる楽しくキュートなポップチューン。当時から「アリ」なのか「ナシ」なのかなんて話がやはりありましたが、それは日本国内を見た話でバンコクで起きているこの出来事を想像すると僕には「アリ」「ナシ」なんかよりもワクワク感の方が正直大きかったのです。
細かい話だが、このコンピと同時期にPANDA RECORDを立ち上げるStylish nonsenseの曲も収録。このPANDA、smallroom周辺のミュージシャンのネットワークというのはラーカバンという国立大学の学生のネットワークである。ここの建築学部の学生を中心にラーカバンからは今のバンコクの音楽ビジネスに関わる人が多数出ている。おかしなロックフェスFat Festivalを開催するラジオ局Fat RadioのスタッフやDJもここ出身者がいる。ラーカバンだけでなく名門チュラロンコーンもそうだがタイの場合建築学部出身者がクリエイティブな職種につくことが多い。当時タイでは建築学部出身ということにかなりステイタスがあったようで、90年代は優秀な人が集まっていたようです。カンヌ映画祭受賞映画監督のアピチャートポンもたしか建築出身。
さて、先ほども書いたように、このCD発売時のsmallroomは外国人にとっては、全く未知なレーベルで、「いやーいよいよバンコクにもこういうシーンが!」的な驚きをもたらしてくれたんだけれども、これは外国人的な話であって、実はタイ人的にはまた違うストーリーがあった模様。「4 tao ther(シー・タオ・ター)」なんて既にコアなファンもいるロックバンドだったし、何よりこの「smallroom」自体が、94年にタイネオアコのマスターピース「VIEW」を出しカルトな人気を誇った伝説のバンド「crub(クラッブ)」のメンバー達のプロジェクトだったから(crubは全く売れずに即解散)一部のバンコクの音楽ファンたちの期待は大きかったに違いない。
smallroomのディレクターのRUNG氏に後から聞いたところ「そんなことなくって、smallroomはじめたときは、お前ら何考えてんかわかんねー、って言われたけどねえ」なんて風にも語ってますが(crubの時に報わなかった思いもあったはず)、smallroom以前/以後と今では言えるほど、このCDの発売以降バンコクの音楽状況が変わっていくことを当時の誰が予想できただろうか。crubとsmallroomというと、何故かフリッパーズ・ギターのことが思い浮かぶワタクシですが、この、ほぼシカトされ全く売れなかったタイのフリッパーズ・ギター的なバンドの思いが花開くのは21世紀のバンコクであったのだ。
余談:昨年ポリスターからsmallroomの2000年から2005年をまとめたコンピレーションを出しました。the sound of young bangkok。聴いてね(PR)。
曲順表
1 Moor :Will you marry me?
2 Groovy Airline : Sky painting
3 Sylish Nonsense : It’s her
4 Penguin Villa : How do i know?
5 Shakers : Sleeping love
6 Greasy cafe’ : Quest?
7 Fashion Show : That day
8 4 Tao Ther : Relaxing your life
9 Martian’ (abduct Cherry) : Stop please!
10 Bonus : The one
11 Moor : Where are you?Who you are? (slow) (再発ボーナストラック)
視聴はこちらhttp://www.smallroom.co.th/music001.html
【告知】
06年10月14日京都メトロでのバンコクミュージシャンのイベント smallroomのミュージシャンも来ます。
HP→POP ASIA 2006 +kyoto
監修したバンコクものコンピ/ウィスットの新刊
 

【SOIMUSIC的バンコクディスクガイド】精神病院から逃げてきた?バンコク初の引きこもり音響系?

endjoy
エンドジョイ / エンドジョイ (CLAY) (2005)
EndJoy / EndJoy (CLAY) (2005)
バンコクのエレクトロニカミュージシャンCliquetpar(クリケットパール)による別名義「EndJoy」による日本発売のライブ盤(ややこしい)。
CDの紹介文によると「Endjoyは、タイのcliquetpar(クリケットパール)すずえりによる不定形ライヴユニットとして2001年にスタートし、現在はTHERMOの活動で知られる須藤俊明(Dr)を迎え三人のユニットとして機能している。」とあるが、基本的な作曲はcliquetparことbangg(バン)がしていると多分思われる(Cliquetpar名義の手売りCDに同じ曲名があるため。)。ああなんかすずえりさんに怒られそうだなあ、この適当情報。(Cliquetparはbanggのソロユニット。念のため)
なんだかのっけからややこしい紹介になってしまったのですが、Cliqeutpar(EndJoy)の音楽はまさに、ややこしい感じ一直線。エレクトロニカと言うものの、かなり捻じ曲がった変則のブレイクビーツが繰り広げられる。本CDではその変則ビートを須藤俊明さんがドラミングしてしまうライブ録音。圧巻。初めから最後までテンション高いステキな音源です。
endjoy
初期のアー写
Cliquetpar本人は元々イギリスの音楽が好きで、2001年ごろはWARPが大好きとよく言っていたけれども、その独特のビート感覚もメロディも、バンコクという常夏のパラレルワールドで天然培養というかアベコベに煮詰めるとこんな感じになるのかといった具合。プログレなんて聞いてないのにプログレになっちゃったというか、インダストリアルって知らんよ、それ何?みたいな感じというか。常夏40度のバンコクで、24度設定のクーラーでキンキンに冷やした極北部屋で発酵するとこうなってしまうのかも(笑)。ライブではKKK風な衣装を着て登場したりもするよく分からん美意識。ちなみにタイトルの精神病院から逃げてきた云々というのはライブの際にタイ人の観客がつぶやいていたコメント。
彼は日本フリークでもあり、好きなミュージシャンがジュディマリに喜太郎・・・と本気か冗談かわからないことを言うのだが、本人的にはもちろん本気。僕が家をたずねた昨年は、丁度映画「スイングガール」がマイブームだったらしく、バンコクの自宅のおそーい回線で一晩がかりで落とした海賊ファイルを何度も見ていた(しかも本編だけでなくスイングガール達によるライブのアウトテイク等もコンプリートしている)。その後音楽にホーンが導入されたのは、スイング・ガールたちを見てホーンが好きになったという・・・これも本気の話。ちなみに自室には何故かマンガ「覚悟のススメ」があったなあ。
こんな感じで自分の頭の中でかなり高速で突っ走っているため、周りのタイ人とは全く相容れていない(笑)。レーベルsmallroomに一時顔を出していたが人間関係がうまくいかなくていかなくなってフェードアウト。so::onという現地のエレクトロニック・ミュージックのグループの発起人だが、最近は携帯にも出ないイベントもこない(面倒くさいから)。大物モダンドッグのリミックスに誘われたが提出しなかった・・などなど、社交的で人間関係を重視するタイ人らしからぬキャラが災いしてか実際バンコクではアルバムが出ていない(笑)。(so::onのコンピには曲が収録済み)その辺が「バンコク初の引き篭もり音響系」と言われる由縁である。
とまあ本人をよく知っているためいろいろ書いてしまったが、実際の本人は美少年風、奇行も愛すべきものと言えないことはないし、そしてなによりその音楽の才能にいろいろ周りがおせっかいをやいているのが実のところ。日本盤が出てしまったのも、周りの日本人の愛情と期待のあらわれでしょう。(childiscのコンピにも1曲収録されていたように思う。)
と周りの期待はともかく、本人は至ってマイペース。今日も24度設定の部屋でダウンロードしているのかも。はやくタイ発アルバムが聞きたい。

(重要)こんなクリケットパールが来るライブを10月14日京都メトロでやります(詳細はかなり下にあるリンク)。PRでした。

cliquetpar
最近のアー写。78年生まれ。変な日本語が堪能。色白。
曲紹介
01. Alice In The OZ
02. Public Gangsta
03. Fire Up Cuntface
04. Farewell Btch
05. Storm In Your Head
06. Sudnarok In The Morning
07. Improvusation
08. In The Ocean
09. S.L.R.
10. Announcement
視聴はこちら
CDの情報ページはこちら(虹釜さんのコメント)
clay
*7”をリリースしている日本のレーベル。PVも見れるし視聴もできる。
OneInchPunch-Label
*細かいプロフィールはこちら
mixi内コミュ
【おしらせ】
クリケットパールも出演の06年10月14日京都メトロでのバンコクミュージシャンのイベント
HP→POP ASIA 2006 +kyoto
【おまけ】
監修したバンコクものコンピ/ウィスットの新刊
 

【SOIMUSIC的バンコクディスクガイド】 ここから全てが始まった。98年常夏のフレンズアゲイン

joey boy 『Bang-Kok』
ジョイ・ボーイ『バンコク』(ベーカリーミュージック)(1998)
JOEY BOY『Bang-Kok』(bakery music)(1998)
このCDから日本からのバンコクカルチャーへの視点が生まれたと言っても過言ではない98年の作品。
陽気なラップのM1(タイトルは「内臓」)が終わり、続くM2。どこかで聞いたことがあるイントロだなーと思っていたら、なんとフリッパーズギター「フレンズ・アゲイン」!テンポがややゆったりとしてはいますが、ほぼ完全なタイ語によるコピー!タイトルがまた謎で、ご丁寧に英語で「chou chou」というタイトルがつけられており(元々英語タイトルなのに)、さらにタイ語では「karampri(キャベツ)」のタイトルが・・・、意味不明。意味不明だが・・・、始めて聞いたときは流石にテンションあがった気がする。
JOEY BOY(ジョイ・ボーイ)は、タイで一時代を築いたレコード会社bakery music(ベーカリー・ミュージック)から94年デビューしたバンコクヒップホップのパイオニア。ジョイ・ボーイの「タイ語のラップ」はタイ語の短い音節を機関銃のように繰り広げるスタイル。タイ語が分からない人が聞いてもリズムの小気味よさは気持ちがいいものだと思う。おそらく90年代のタイ人には驚くべき新しいタイの音楽だったに違いないと思う。
そんなわけでジョイ・ボーイは、ベーカリー在籍当時から人気で、現在もgancore clubというヒップホップレーベルを作り契約も大手グランミーに移して活動中。ちなみにタイでもヒップホップはファッションと結びついていて非常に人気の音楽ジャンル。ロックフェスでも一番集客力があるのはgancore clubのステージだったりする。
さてベーカリー・ミュージックの経営が怪しくなってきた時期に、グランミーへの移籍という世渡りをはたし、「見た目アンダーグラウンドだけど流通などは超大手」という最強の状況を作っているジョイボーイはすごくビジネスセンス、プロデュースセンスがある人。自分のレーベルで、バンコクヒップホップ界の大ボス的存在をキープするだけでなく、最近ではポップスバンド(?)Doo ba dooをプロデュースしたりもしてなかなか売れていたりもする。ライブも大規模なものをしかけたり、雑誌の表紙も度々でるしで、バンコクカルチャー界の大御所といったイメージは未だある。あと麻薬疑惑!や乱交パーティーなどのゴシップがメディアに出たのも記憶に新しいところ。
で、なんでそんなヒップホップの人がフリッパーズのカヴァーかと言うとこれはbakery musicのプロデューサーのZOMKIAT(ソムキアット)さんの仕事。なんでもソムキアットさんは渋谷を歩いてるときに偶然聞いてびびっと来たそうだ。こんなエピソードからも「イープン」(日本)がいかにタイ(だけじゃなくて他の東南アジア)から強い眼差しを長い間受けているのがわかる(逆はほぼないけども)。ソムキアットはその後ピチカート・ファイブの「Sweet soul revue」もカヴァーすることになり、タイの「小西康晴+小室哲哉÷2」の異名を得ることになる・・・という話はまた後ほど。
さて、このタイの「フレンズ・アゲイン」。さらに後日談があって、2000年ぐらいにジョイボーイが来日した時のこと(日比谷公園のアジアフェスタかなにか)。ラッキーなことにその場で話すことが出来たのでこのいきさつを聞いてみようと思い、ファンらしく「フリッパーズギターのカヴァーすごくいいですね!」と切り出すと「ちゃんと権利買ってるから」という冷めた回答をいただいてしまった(笑)。その場では「そ、そうですか」的なリアクションを返すしかなかったわけだが、さらに5年ぐらいが経って日本サイドの関係者に聞いたら、そんな契約してないよーそもそも知らない、とのこと(笑)。ファンに嘘つかなくてもいいのにね!
曲順表
Organs
Chou Chou(これがfriends againのカヴァー)
Bump!
Drink Up
Be Good
Old School Anthem
Lucky
Hi So – So Hi
Maya
Papa Mama
It’s On
Break
Drink Up (Reggae Version)
【おしらせ】
06年10月14日京都メトロでのバンコクミュージシャンのイベント
HP→POP ASIA 2006 +kyoto
【おまけ】
監修したバンコクものコンピ/ウィスットの新刊
 

【SOIMUSIC的バンコクディスクガイド】 初めの言い訳

2年間SOI MUSICというイベントをやったり、マンガ家のウィスット・ポンニミットが本を出したりと、徐々にバンコクカルチャーを日本にお届けしてるわけですが、そのバンコクカルチャー浸透度が気になるSOI MUSIC事務所。(バンコクカルチャーおせっかい紹介団体を自認してますので・・・)
そんなわけで周りを見渡してみた我々ですが、やっぱりどう見積もっても「バンコクカルチャー?何それ?」というのが実のところ。盛り上がってるのは、結局のところ両手で数えるぐらいのいつもの面子・・・。(毎回イベントに、時にはバンコクまで来てくれる心強き方々もいらっしゃるにはいらっしゃいます。感謝です。)しまいには「数年前にバンコクの音楽流行りましたよね?」なんて声までmixiやブログ等で見かけ、「全く流行ってねーつーの!!!!」なんて寂しい思いをする日もあったなあ。
というわけで、さっと考えてみた我々は「問題はバンコクカルチャーの情報がないこと」と捉え、バンコクのディスクガイドをやることにしました。「安直だ!」「そもそもCD買うのが大変なんじゃないの!」というご意見ありそうですが、「やっぱり音楽が好き」というシンプルな考えから「バンコクディスクガイド?ナイスアイディア!」と思っているのです。それにCDは意外に買えてしまうしね。(渋谷のアップルクランブル、下北のアジアンバウンドブックスなど)
というわけで初心のワクワクを思い出しながら、これからしばらくバンコクのSOI MUSIC的な「名盤」をご紹介していきたいと思います。たぶん10回ぐらいは続くと思う。
(重要)今年も10月にバンコクミュージシャンのイベントやるんですよね。そのPRが裏テーマです(笑)。というかこれが切実(笑)
【宣伝】
06年10月14日京都メトロでのバンコクミュージシャンのイベント
HP→POP ASIA 2006 +kyoto
監修したバンコクものコンピ/ウィスットの新刊