しばらく更新が滞っていましたね。今年もよろしくお願いします。福冨です。バンコクの大学院に一年ほど通うことになりましたので、現地から色々と情報をお届けできたらと思います。
さて以前の記事でバンコクの独立系書店Bookmobyを紹介しましたが、新年明けたてに新しい独立系書店が(再)オープンしたとのことで行ってきました。それがこちらのCandide Booksです。
大きなガジュマルの木が印象的ですね。
Candide Booksは、日本でもおなじみフランスの思想家ヴォルテールの小説『カンディード』から名前をとっています。(タイ語だとコンディットという音が近いです。)この書店、もともとは「ヌン(タイ語で1)」という出版社を経営していた若手作家の10デシベルとキッティポン・サッカーノンの二人が、2009年に、現在とは違う場所にオープンしたものでした。その後2010年になって、出版社Betweentheline Publishingの編集長、パッドさん(P’Padd)ことドゥアンルタイ・エーサナーチャータンさんが経営を引き継いで、現在のオーナーになっています。
2011年のバンコク洪水のタイミングで一時休業し、移転先を探していましたが、建築家でデザイナーのドゥアンリット・ブンナーク氏の事務所The Jam Factoryの敷地内に移転が決まり、今年一月二日に再オープンとあいなりました。
もともとはチャオプラヤー川を使った河川舟運のための倉庫だった建物を使用しているため、店内のスペースはゆったり、天井も高く広々かつ落ち着いた雰囲気になっています。
入り口から店内を見た図。ショールームみたいですね。
店内にはソファーもあります。
お店の外でもゆったり座って読書ができる。
品揃えはタイの小説および海外文学のタイ語訳が比較的多めです。オーナーのパッドさんは読書量も、本に関する知識も非常に豊富で、小説が多いと言ってもバリエーションに富んでいて、本棚を眺めていて飽きません。(最近は更新が減っていますが、パッドさんの書評ブログはタイの読書家たちに大人気です。)
もともとは人々の社交場としてのカフェをベースに書店のイメージが作られていたそうで、おしゃべり大好きなパッドさんの人柄もあいまって、色々なことを教えてもらえます。
右上の写真の方がオーナーのパッドさんことドゥアンルタイ・エーサナーチャータンさん。「仕事してる風がいいでしょ」という本人からの提案でポーズをとってもらったらだいぶシリアスなポートレートになってしまいましたが、実際はお茶目で物腰柔らかな女性です。
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これは全部ヴォルテールですね、左から「ザディーグ」「カンディード」「ばか正直」
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出版社ReadやSameskybooksの、タイ語で書かれた専門書、学術書など。
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プラープダー・ユンの出版社Typhoon Booksおよび姉妹出版社Sunday Afternoonの書籍。
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ナギーブ・マフフーズの「カイロ三部作」
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意外とマイケル・サンデル「それをお金で買いますか」「これからの「正義」の話をしよう」
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左から、去年のBangkok Creative Writing Workshopに参加した若手作家たちの短編集「Sakod Issue 2」、トンチャイ・ウィニッチャクン「地図がつくったタイ」、オーウェル「1984年」、2012年東南アジア文学賞ウィパート・シートーン「小人」
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おなじみこの本のタイ語版も。
エスプレッソ系のメニューも、ペーパードリップのコーヒーもあります。お茶は六種類のブレンドティーから選べます。
さて、名編集者かつ読書家であるパッドさんですが、読書にコーヒーはつきもの?ということで大のコーヒー好きでもあります。ぼくもバンコクでおすすめのコーヒー屋さんを教えてもらったことがあります。
ここ数年バンコクでもいわゆるサードウェーブ・コーヒーのお店が増えていますが、こちらでもこだわりのシングルオリジンの豆を味わうことができます。さらにお茶のバリエーションも豊富で、ちょっと一息つきたいときにもぴったりですね。
本を買いにくるお客さんだけでなく、ちょっと一息コーヒーをというお客さん、仕事の打ち合わせのお客さんなど、色んな雰囲気の方がいらっしゃって、みなさん思い思いの時間を過ごしています。
ということでパッドさんがじきじきにコーヒーを淹れてくれました。タイ北部チェンマイ県はメーカムポーンのコーヒーです。ご本人いわくタイで一番好きなコーヒー豆、とのこと。
さて、ということでパッドさんに淹れてもらったコーヒーを飲みながら、早速こちらで買った本を読みましょう。日本へも何度もシンポジウムなどで訪れている人気の社会学・政治学・人類学者タネート・ウォンヤーンナーワーの『1968:革命の脚注』です。少し硬すぎましたかね。
というところで終わってしまうとただお洒落なブックカフェを紹介したような形だけで終わってしまうのですが、今後はこちらのお店でもさまざまなイベント、セミナーが実施されていくようです。たとえばこの日曜日、一月十二日には、プラープダー・ユン、ウティット・ヘーマムーン、サカーリーヤー・アマタヤー、ワート・ラウィーなどの著名作家、編集者たちが参加する「文学における市民」と題したセミナーが開かれました。現在の政治的動乱の中で、文学には何ができるのか、作家たちによるさまざまな側面からの議論が見られました。
ということで、読書の場としても、憩いの場としても、意見交換と交流の場としても今後がますます楽しみなCandide Booksをご紹介しました。パッドさんおよびお店のスタッフのみなさん、ありがとうございました。(https://www.facebook.com/CandideBooks)
※ちなみに、以下にCandide Booksのグーグルマップおよび、タイ語の地図を貼っておきますが、正直行って少し行きづらい場所にあります。主な行き方としては二つあります。
1)船にのる
BTSサパーンタークシン駅からサートーンの船着き場に歩いて行き、チャオプラヤー・エクスプレスに乗ります。方向は北行き、王宮前広場やワットポーの方向に向かう船に乗ります。15B。三つ目の船着き場、シープラヤー(Si Phraya)で一度降りたら、船着き場から一度外に出ます。道路に出たら左手にまっすぐ五分ほど歩き(ロイヤルオーキッド・シェラトンホテルを通り過ぎます)、River Cityと書かれた建物が見えますと、そこに「SI PHRAYA PIER」と書かれた白い建物の、渡し船の船着き場があります。そこから渡し船に乗りましょう。3.5Bです。
渡し船を降りたところに「KLONGSAN PLAZA」と書かれた建物と、市場が広がっています。建物に沿って真っすぐ市場を進んで行くと(途中右手にセブンイレブンがあります)、Watsonsという薬局が右手にありますので、その角を右に曲がって進んでください。少し進むと、Candide Booksがあります。
2)BTSからタクシー(もしくはバス)
BTSクルントンブリー駅の一番出口を出たところでタクシーをつかまえて、下にあるタイ語の地図を見せて行ってもらうという手もあります。路線バスだと同じところから84番に乗るという手もありますが、少し難易度が高いかもしれません。
↓Candide Books↓