先日のWITさんの文章を書いたので、勢いに乗ってWITさんの2004年の一番でかい仕事を書いてみようと思う。
(前置き)2004年の12月10日、バンコクの「ラーチャマンクラ」スタジアムで6万人、7時間に及ぶコンサートがあった。「ロック」でも「歌謡」でもない、そのどっちもが合わさった、いやちょっと「芸能」臭強めの「歌謡ショー」のようなイベント。
「ベーカリーミュージック(bakerymusic)」というタイの「メジャー・インディー」とでも言えそうなレコード会社の10周年記念イベント。日本に向けて「ベーカリー」を説明するなら、「フリッパーズをカヴァーしたjoey boyがいた」とか「ピチカートをカヴァーしたMR.Zがいる」とか、「本田ユカさん、ショーンレノン、ZAKさん、大野さんがアルバム参加した(我らが)Moderndogがいる」レーベル(てかレコード会社か)と言える。けどこう書くと誤解がある。彼らはベーカリーの一部にすぎず、そのほか70%ぐらいは、めちゃんこ「芸能」風味が強い「バラード」だったり「ロック」だったりするのだ。ここに「ベーカリー」がタイのヤンエグのハートをガッチリゲットして、メガビッグな会社に成長し、挙句のはてに10周年で6万人のコンサートをやれちゃったりした秘密がある(かなー)、その理由の細かい説明は来週。
(本題)で、そんなビッグなスタジアムロックなコンサートのステージ+映像+照明のトータルディレクションをしたのが、ウィット・ピムカンチャナポン(Wit Pimkanchanapong)さん。そしてWITがパートナーとして選んだのが照明担当に建築家の遠藤治朗。映像担当に映画監督のアピチャートポン・ウィラセータクン。
映像用のプロジェクター47台にスクリーン47台。照明は「照明会社にどれくらい照明機材あるの?よし、それ全部」。というめちゃんこバブリー仕様。集客6万人、ランニングタイム7時間、携帯会社のでかいスポンサー。客席にはプリンセス。終了夜中の2時なのにバカスカ花火を打ち上げたー。などなどやっぱりバブリーでどこか狂ってるはちゃめちゃなイベント。バブルで悪いか、悪くない。こんなにばかげているイベントは滅多ない。
で、これがその写真。
(重要)
http://homepage.mac.com/witpim/iblog/B1029668979/C179532943/E564751833/index.html
http://homepage.mac.com/witpim/iblog/B1029668979/C179532943/E1288435729/index.html
(説明)遠藤はNEW-GUESTHOUSEという建築事務所をやっている。そしてSOIMUSICの主催者。元インテンショナリーズ。最近の仕事はFRAPBOISのショーとかやった。状況に柔軟で、かつひたすら笑える南国フレイヴァー全開の楽しい歌って踊れる建築家。踊れるというのはコンサート照明やってるくせに、FUTONのライブが始まると何故かいつもステージの上で踊っているからだ。
アピチャートポンは「Tropical malady」や「Blisfully yours」が有名なカンヌ受賞作家。ゲイゲイいわれてるし、抽象的すぎとかいわれてるけど、「タイ」の空気を一番よく描けるの映画監督。「抽象経由リアル行き、ああ切ない」。「Tropical malady」は思い出すたび切なくなります。
(もう、遠藤さんがいる時点で、手前味噌な感じバリバリだけど、でも面白いんだからしょーがないので続けます)
WITさんが描いたステージ、照明、映像のイメージ。それをデコレーションしたのがアピチャートポンと遠藤だ。アピチャートポンはこのバカでかい、5つのスクリーン(9スクリーンを1スクリーンに見立てている)のために5つのカメラで「くらげ」「ビーチ」「子供」など、かっちょ良い映像をとってきた。遠藤はその映像を殺さないでめちゃんこハイパーなライティングをデザインした。遠藤の照明はすごい。普通じゃない。照明卓の前に座る遠藤はミュージシャンみたいだ。もしくはゲーマー。隣に座る照明オペレーターが泣きそう、もしくは怒りそうなぐらい、卓を叩く。事前のプログラミングは最小限にして隙間をつくり、あとはライブ。ライブで叩く、卓を叩く。プログラミングとライブ操作の間で照明にはバグが起きる。起きた違和感がめちゃんこ面白い。卓を叩く遠藤の後姿はちょっと感動的だ、大げさではなく。
タイの人はこのショー全体をめちゃめちゃ楽しんでいた。6万人がみんな歌ってるんだもん。すげー。タイの人の気質って現場向きなのだ。会場の雰囲気は花火大会みたい。座席はブロック指定だったんだけど、そんなの守ってるスタッフ・お客ははじめの1時間ぐらいであとは勝手に椅子ならべたり、地べたに座ったりで夕涼みにきたみたいな家族連れとかいて、「やっぱタイはいいなー」。
ぼくが個人的に面白かったのはやっぱりMODERNDOGだった。5曲ほどしか演奏しなかったけど、やっぱりいいんだなー。3人のメンバーの熱量のバランスがいい。
MODERNDOGのショーでは、日本からZAKさんが音響卓をいじってくれた。ZAKさんはただ遊びに来ていただけなのに、そしてMODERNDOGのPODさんもずうずうしく頼んだりはできなかったんだけど、周りのお節介によって、ZAKさんが卓をいじることになった。結果MODERNDOGの音響が一番よかった気がする。
それと「ベーカリー」のアイドル部門「DOJO CITY」レーベルのショーもよかった。タイの「ハロプロ」というかなんていうか、ちょっと変態っぽい感じ。残念だったのは「ドラッグ4000錠保持(!)」で一番重要なTriumph Kingdomの女の子が不参加だったことだ。ドラッグ4000錠も持ってたら一生牢屋にいることになるんだろう。みんな大好きTKだったのでこの出来事には落胆した人も多かったと思う。
だんだんベーカリーの説明っぽくなってきたので、この辺で終わり。僕はこのコンサート、「音楽」よりも「ステージ」の方が楽しくて楽しくてしかたなかった。
すみませんー、欄が違うのですが、ウィスット君のバンコク・アリアンスフランセーゼでのイベント、3月19日に延期になりました。どうもすみません!